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「ねえ、お父様。今度はいつ、お帰りになるの?」 月渓は愛しい娘に微笑んだ。妻によく似て整った顔立ちに澄んだ瞳をもつ幼いわが子を、壊れ物を扱うようにそっと抱き上げた。 「すぐに戻るから、お母様のおっしゃることをよく聞くんだよ。」 「そうはおっしゃるけれど、また長い間、お母様と二人ぼっちなんだわ。」 峯王仲達が登極し、州侯の位を賜って以来のこの数年、何度、妻と生まれたばかりであった娘を置いて王宮に向かったことか。妻はもう、あきらめたような表情で微笑んでいる。しかし、勝気そうな少女となった娘はその瞳を燃え上がらせて挑むような口調で月渓を責めた。 「お母様はお嫌いか?」 「好きよ。でも、お父様も好きなの。ねえ、お願い。もう少しここにいらして。」 「そうはゆかないのだよ、峯王さまは登極されたばかり、お父様がお助けせねばならないのだ。」 「嘘よ、お父様は公主さまが大切なのでしょう!」 「これ、珠珠!」 妻がはっとして娘を彼の腕の中から取り上げ、淡く微笑んだ。 「申し訳ございません・・・行ってらっしゃいませ。恙無くお役目を果たされますように。」 「・・・行ってくる。すまぬが後を頼む。」 涙をためた目で自分を見送る娘と、その肩を細い腕で意外に力強くしっかりと掴んでいる妻に見送られ月渓は王宮へと向かった。いささかの不安を供として。 城を留守にすることに不安があるわけではない。彼の妻は良くできた人物で彼の留守の間も娘を正しく導いてくれるだろう。州宰も信頼の置ける人物で、兵たちも彼に信服している。 不安は彼の中にあった。 いみじくも、彼の幼い娘が口走ったこと。妻がその類のことを口にするとは思えず。 見るたびに目を見張るほどの娘の成長振りに、彼は王宮の中で時を止めた少女と比べてしまう己に気がつく。 (聡い子だ。) 己でも思考から締め出している不安。 王宮へ行くことを恐れている。 いや、王宮のなかで時を止めたままの華やかな少女の元へ行くことを恐れている。 己の大事な娘を見るたびに、重ねて、または鏡に映してみてしまう、その少女。 今に娘はかの公主の年齢に追いつくに違いない。そのとき、彼は娘の目をきちんと見ることができるのか。 州城を離れ、妻を離れ、娘を離れ、そして王宮へあがるたびに大きくなる不安。 己の不安に身喰いされる痛みを覚えながら、月渓は己を待つ者のいる所へとまた向かうのだった。 |
| ふ・・・ふふふふふふふ(壊) どうです皆さん、月渓に妻子!妻子!妻子! いやー、私は「月渓に妻子がいたら十二ジャンル続けられないかも」などと宣いましたが、ええはっきり言いましょう。萌えました!亜美さんアナタは恐ろしか人じゃ!うふ、うふふふふふ(ヨコシマな笑み)幼くして魔を見抜いている娘!まだ見ぬ公主に父親を奪われそうなのを本能的に察している娘!どーしましょどーしましょ!(錯乱)こりゃー萌えですよ! 亜美さん本当にありがとうございました。 |