今はただ 思ひ絶えなむ とばかりを 人づてならで いふよしもがな
〜sideA〜
「人は、変わることができるのです。恵侯。」
半獣だというその将軍の、静謐とも言える静かな言葉を、男は胸の奥底に静かに受け止めた。
それに続いた、あのひとの武勇談も。
かつての彼女を知る自分には想像もつかない、「変わることができた」あのひとの、姿。
想像してみようとする。
だが、なかなかそれらしい形をとれない。
瞼の裏に焼きついている、艶やかで魅惑的だった彼女の姿が、どうしても離れなくて。
目の前の将軍が語る彼女の姿と、己の脳裏から片時も離れたことのない彼女の姿との間の溝が、どうしても埋まらない。
将軍は、信頼している友人のことを話すように、誇らしげに彼女を語る。
きっと、この穏やかで謙虚な将軍の信頼を勝ちえるほどの存在になっているのだろう。
あるいは、もしかしたら・・・??
彼が語るその姿の、自分の中にある姿との、あまりの差異。
せめて、それを目の当たりにすることが出来るのなら。
己の知らない、あのひとの姿を見ることが出来るのなら。
心おきなく別離(わかれ)の言葉を告げることが出来るかもしれない。
貴女と私は、もはや別々の世界の人間なのだと。
せめて、逢うことが出来るのなら。
愚かな。
男は、自嘲の笑みを浮かべた。
今この時でさえ、己の心に巣くう邪な闇を辛うじて封じ込めているのに。
そんな貴女は知らないと。
そのような静かな笑みなど知らないと。
この腕に攫って、誰も来ない牢獄に閉じこめて。
私に憎悪を眼差しを向ける貴女をこそ、私は見たいのだと。
私にだけ、向けられるその眼差しを。
せめて、逢うことが出来るのなら・・・?
馬鹿な。
逢ったら最後・・・・
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