陽子の腰に手を回してもたれかからせたまま、尚隆は空いた方の手で尚も手酌で飲んでいたが、ふと悪戯な微笑を唇に上せた。
 流れ落ちる緋色の髪をかき上げ片側に寄せると、ぼんやりとしていた陽子が不思議そうに見上げた。
「何?」
 問いには答えず、緩んでいた陽子の部屋着の襟を更に押し広げる。
「あ、やん」
 尚隆は身を起こして胸がはだけないように慌てて衣を押さえた陽子の手を敢えて止めることはせず、ただ襟だけを横に開いて薄紅に染まった細い首から片方の肩までを顕わにさせた。そうしておいて座卓の上に手を伸ばし、放置されていた徳利を取り上げる。直接一口飲んで温度を確かめると、じっと見ている陽子の鎖骨の窪みにとくとくと注ぎ込んだ。
「あ、ねえ、ちょっと」
「動くと零れる」
 驚いて腰を浮かそうとした陽子を一言で静止させ、酒に口をつける。
「人肌のぬる燗もいいものだ」
「何を‥‥」
 怒った口ぶりをしては見せても、陽子の呼吸の乱れは隠せなかった。くつりと笑いながら尚隆は窪みを舐め、最後に強く吸った。
「これは素晴らしい杯だな。乾すと色が変わる」
 くつくつと笑う尚隆を真っ赤になった陽子が睨み上げた。
「もうっ」
「これは悪かったな、俺ばかり飲んでいては機嫌を損ねられても仕方がない」
「そんなこと言ってるわけじゃ‥‥」
 猛然と反論しようとした陽子の唇はすぐに尚隆の唇に覆われ、口移しに温かい液体が流し込まれた。
「んっ」
 酒を飲み下してもまだ長く続けられる口づけ。痺れるような快感が陽子を襲う。
 唇が解放されたとき陽子は陶然と座り込んでいた。部屋着はほとんど滑り落ちて片方の乳房が顕わになっていたが、陽子はそのことにも気付いてはいないようだった。
 尚隆は満足そうに口の端を上げると、再び徳利を手に取り陽子の肩に注いだ。
「はあん」
 杯に口をつけるように鎖骨に唇を寄せると陽子が微かに震え、酒が溢れて薄紅の肌を伝った。尚隆の舌が流れる酒を追って下へ進む。舌は酒を舐め取るが、舌の動きに合わせて震えが大きくなるので肌を伝う酒は一向に減らない。陽子が耐え切れずに身悶え、尚隆の頭を抱え込むように押さえた。
 拒んでいるのか求めているのか、当の陽子にも分かってはいない動きに尚隆は逆らわない。芳香を放つ酒と、それ以上に甘く香る肌を尚隆は味わう。
 目のくらむような陶酔と酩酊の中で、夜はゆっくりと更けていった。


(了)



 あはははは。悪乗りしました。えへ(笑って誤魔化す)。冷酒、熱燗ときたから、一応ぬる燗も要るかな、と。
 もうこのオヤジったら、悪酔いするよっ。あ、神籍だから大丈夫か。
 しかし、乳首すら明示していないのになんでこんなに淫靡なんだろう‥‥。




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「熱燗」に対する「濃厚なイチャイチャにはしませんでした」とのぽぺさんのコメントに私めが「え〜なんでなんでなんで〜〜〜!!」と駄々をこねたら続きを書いて下さいました。陽子ちゃんの鎖骨で飲む酒・・・そりゃ美味いだろうよオヤジめ!!これ、ぬる燗じゃなくて熱いままだったらなんか違う世界になっちゃう・・・とか考えたことは内緒に願いま・・・(撲殺)