桂花陳酒編


ほのかに薫る、甘い香り。
彼の人の肌のように、
柔らかで暖かく、心安らぐその香り。
生で飲むには甘過ぎるが、
女王の唇越しに味わえば、
口に程好い甘さとなる。

月に咲くと言う、黄金の花。
夜闇に鮮やかに浮かぶその姿は、ふっくらと愛らしく。
白い胸の頂を鮮やかに彩る、紅い蕾を想わせる。
甘い香りと愛らしい姿に魅了され、
咲き零れる花の下、静かに佇む男がひとり。


愛しい気配が傍らに立ち、ふいに香りが強さを増す。

佇む男を妨げぬよう、そっと差し出された玻璃の器。
彼の器には、男の好む酒が注がれており、
彼女の器には、黄金の蜜の酒。
暖かな心遣いに一礼を返し、

かつん

玻璃の重なる音を、涼やかに響かせた。


強い酒を一気に飲み干し、優しい手から玻璃を取る。
月の光に輝く玻璃を、桂の根元にそっと置き、
小首を傾げる女王へ、涼やかな微笑を返した。

手を伸ばして華奢な腰を軽く引き寄せ、
頤を持ち上げる。

甘い酒に潤んで煌く、新緑の瞳、珊瑚の唇。
柔らかな舌に絡まる金の蜜を味わうために、
深く唇を重ねあわせた。





*******************************************************

森屋さまの桂花酒。杏露酒も紹興酒も好きなのですがこれは飲んだことがないんですよね私・・・。金木犀は最近まで芳香剤代わりに我が家のトイレに置いてあったのですが(すみません品のない話で)本当に強烈な芳香です。閣下ってばなんつー目で金木犀を見つめてらっしゃるんだか・・・(笑)夜と花と酒と杯と女と・・・合奏音楽のように響きあっていますわvv