「随分とお話がはずんでおられたようですね」
 言外の想いを言の葉に乗せ、頭身のわずかに伸びた影−−斜め半歩後ろに従う。
「うん。延台輔が蓬莱から珍しい物を持ってこられてね、それがちょっとした曰くありな物だったから、少しはしゃいでしまったな」
「曰くですか」
「あぁ−−いや、そんなに深刻な事じゃなくて」
「お聞きしても?」
「つまらないことだよ−−−延台輔が持ってこられたのはあるお菓子でね、それは外側がチョコで中には洋酒が入ってるんだ」
「ちょこ?洋酒ですか・・・?」
「−−−何て言ったら良いんだろう。要するに、外はすぐ溶ける甘い菓子で中にお酒が入ってるって代物なんだけど・・・」
 女が何とか言い表そうとしているのが分かる。そして察することの出来ない己も。
 それは風に霧散した初めの言葉と相まって、鈍い痛みを引き起こす。
「とにかくその菓子が私の記憶の中で罪の味だ、って言う話をしていたんだ」
「・・・罪の味」
「別に本当に罪を犯した訳じゃないぞ。たまたま、小さい頃の悪戯と結びついていたからそう思ったわけであって−−−あぁ、もういい。ほらさっさと行くぞ!」
 女は足音高く先を急ぐ。熟れたような頬をしながら。
 それを見やり笑みながら、影すら踏めぬ男がそっと囁く。

「罪なのは主上でございましょう」

   まこと罪は甘露の如く いまやしばし酔い心地