「傷口、舐めてくれたんだよね」
「……は?」
 思わず聞き返した宇都宮に、上越がにっこりと微笑む。
「ほら、よく舐めときゃ治るっていうでしょ。それを実行してもらってさ」
 ――何やってるんだ、あいつは。
 恐らく促したのは、宇都宮の目の前にいるこの人物であろう。たとえ上官だろうが、言うことを全て聞く必要はないのだと思う宇都宮にとって、高崎の行動は時にイラつかせる原因となる。
「君からもよく言っておいてよ、血液はきれいなものじゃないし、舐めても治らな――」
 上越が言い終わるより先に、宇都宮は上越の赤くなっている指先を口に含んだ。舌の感触が指先を伝わり、上越は眉をしかめる。
 宇都宮から手を離そうとするものの、手首を掴まれているので引くこともできなかった。
 やがて、指先についたものを舐めて宇都宮が手を離した時には、互いに盛大に眉をしかめていた。
「全く、君らは何なんだ」
 自ら言い出したにも関わらずぶつぶつ文句を言っている上越に、宇都宮は尋ねる。
「……なに混ぜてあるんですか」
 舐めてしまえば血ではないことはすぐに分かる。上越はあっさりと答えた。
「ケチャップにイチゴジャム。あとソースとかいろいろ」
 口に残った甘いものの正体が分かり、宇都宮はさらに眉をしかめた。
「なんで舐めたの」
「消毒ですよ」